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 ピコ島でも修道士たちは数々のエピソードを残していった。最も有名なものの中には以下のようなものもある。ある修道士がピコ島に到着し既にいた島民に耕作地を要求した際に、「これだけの広さがあれば十分だ」牛一頭分のなめし皮を差し出した。島民の了承を受けると、修道士たちはその牛の皮を細長く切り、長いひも状にし、それで囲えるだけの20aの耕作地を手にした、というものである。ティトズ・アデガ(=ティトのブドウ園)の生産するワインのブランド名:A Cerca dos Frades(ア・セルカ・ドシュ・フラーデシュ)とはこの逸話に由来する。醸造所の設立者であるティト・シルヴァにとって、祖父が所有していたブドウ畑での家族総出での収穫の光景は大切な原風景であり、2015年からその畑の修復に着手した。テランテス・ド・ピコ、アリント・ドシュ・アソーレス、ヴェルデーリョのピコ島の土着品種を選び、畑を再整備して3ha植樹。醸造家にはアソーレス諸島の複数の島でのワイン造りに関わり、アソーレス諸島ワイン委員会の会長の職にも着いていたパウロ・マシャドが担当。ワイン造りの面でも、政策面でもアソーレス諸島のワイン文化の再興に努めた人物で、ピコ島ワインの復興の多くの局面に関わってきた。古い石垣の畑を再興しての栽培なのでブドウの樹齢は若いが、それを補って余りある畑のポテンシャルを、シンプルな醸造で忠実にワインに表している。

Pico - A Cerca dos Frades - Colheita Selecionada
ピコ ア・セルカ・ドシュ・フラーデシュ
コリェイタ・セレシオナーダ
 
品種:ヴェルデーリョ、テランテス・ド・ピコ、アリント・ドシュ・アソーレス
植樹:2016年
位置:標高30~35m、北向き
土壌:火山性土壌
除梗せずにダイレクトプレス
温度コントロール下で野生酵母とともに醗酵
75%は垂直ステンレスタンク、15%は水平醗酵槽、10%はフレンチオーク樽で熟成した後、ブレンド
ピコ島を代表する3品種のブレンド。2018年、ティトズ・アデガのファーストヴィンテッジはこのブレンドワインから始まった。
ヴェルデーリョのアロマ、テランテス・ド・ピコのエレガンス、アリント・ドシュ・アソーレスのフレッシュさが合わさった、ピコ島ならではのワイン。
Pico - A Cerca dos Frades Verdelho - Colheita Selecionada
ピコ ア・セルカ・ドシュ・フラーデシュ・ヴェルデーリョ
コリェイタ・セレシオナーダ
 
品種:ヴェルデーリョ100%
植樹:2016年
位置:標高35~45m、北向き
土壌:火山性土壌
除梗せずにダイレクトプレス
50%はフレンチオーク樽、50%は水平ステンレスタンクで醗酵
それぞれ6ヵ月間熟成した後、ブレンド
ピコ島のヴェルデーリョはマデイラ島のヴェルデーリョと同じものと考えられている。
Pico - A Cerca dos Frades Terrantez do Pico
- Colheita Selecionada
ピコ ア・セルカ・ドシュ・フラーデシュ・テランテス・ド・ピコ
コリェイタ・セレシオナーダ
 
○Pico - A Cerca dos Frades Terrantez do Pico
- Colheita Selecionada
ピコ ア・セルカ・ドシュ・フラーデシュ・テランテス・ド・ピコ
コリェイタ・セレシオナーダ
除梗せずにダイレクトプレス
50%はフレンチオーク樽、50%は水平ステンレスタンクで醗酵
それぞれ6ヵ月間熟成した後、ブレンド
マデイラ島にもテランテスという品種があるが、それとは別の品種とされる。絶滅危惧種とされ、復興の最中。
樹齢の若さからは想像もつかない濃密さと、骨格を備えたガストロノミックな仕上がりのワイン。
 
 

ティトズ・アデガとは

 
 

  地域:Ilhas dos Açores アソーレス諸島
地区、村:Ilha do Pico ピコ島
オーナー:Tito Silva ティト・シルヴァ
醸造・栽培責任者:Paulo Machado パウロ・マシャド
HP:http://www.acercadosfrades.pt/
Instagram : https://www.instagram.com/acercadosfrades_by_titosadega/
 
アソーレス諸島について
 9つの島からなる北大西洋の火山島郡で1720年のピコ島、1957年のファイアル島での大規模な噴火が記録されている。1415世紀頃に発見され、ブドウも同時期に栽培が開始された。アンドレ・ジュリアン(フランス人の最初のワインライター)の1812年の報告によると、9つの島から合わせて1340Lのワインが生産され多くが輸出されていたらしいが、2200Lだったという説もある。しかし多くのワイン産地同様、ベト病やフィロキセラ禍が島へと伝わり、諸島全体からブドウ畑はそれにまつわる文化と共に姿を消し、ハイブリッド品種で細々と自家消費ワインを造り、アメリカ台木を利用して地品種の栽培を続けるという20世紀後半まで続いた。
 最大の島はサン・ミゲル島には人口の約半分の13万人が住んでいる。各島にそれぞれの特色はあるが、現在は酪農が盛んで諸島の総面積の半分が牧草地たちとなっている。その他トウモロコシやパイナップルの栽培も盛んだが、近年は観光業が島民の生活を大きく変えている。ワイン産業はピコ島が主要ではあるものの、テルセイラ島、グラシオーザ島、ファイアル島、サン・ミゲル島、などでもブドウ栽培はされており、諸島全体で36のワイナリーがある(2023年)。
 
ピコ島について
ピコ島に行くと石壁(クライシュ)の入り組む海辺のブドウ畑の姿に圧倒される。石壁の長さは合計8km、地球二周分の長さがあると言われ、2004年に「ピコ島のブドウ畑文化の景観」(987haの畑)がユネスコ世界遺産に登録されたが、その実ブドウ畑として機能していたのは140haほどだった。しかし歴史を紐解くと、島外からのベト病やフィロキセラ禍の伝来により、20世紀初めにはピコ島のワイン産業は風前の灯だった。1949年に協同組合が設立はブドウ栽培文化の復活の第一歩と言うことができるだろうが島全体として大きくワイン生産量が増えたわけではない。しかしそれに合わせて行政が支援策を打ち出したことにより、島外からのワイン技術者の注目を集めるようになり、次第に生産量は増えていく。2011年時点で20Lのワインが生産され、それ以降も着実に生産量は増加。2014年にはアントニオ・マンサニータを含む有志達によりアソーレス・ワイン・カンパニーが設立。その後も島内外からのピコ・ワインへの機運は高まりつづけ、2022年時点で70Lの生産量となっている。
 
現在ピコ島には1000ha弱のブドウ畑が生産体制にあるそうで、さらに2000haの耕作放棄された畑が残っている品種の多くはアリント・ドシュ・アソーレスが植えられており、よりマイナー品種であるヴェルデーリョやテランテシュなどの地品種の再興の動きも見られる。2010年代前半にはポルトガルワインの文脈にはついぞ見かけられなかったピコ島のワインだが、2020年代に入りその特異な歴史とワインに光が再び当たり始めた。
 
【ワイナリーと造り手について】
 ピコ島でも修道士たちは数々のエピソードを残していった。最も有名なものの中には以下のようなものもある。ある修道士がピコ島に到着し既にいた島民に耕作地を要求した際に、「これだけの広さがあれば十分だ」牛一頭分のなめし皮を差し出した。島民の了承を受けると、修道士たちはその牛の皮を細長く切り、長いひも状にし、それで囲えるだけの20aの耕作地を手にした、というものである。
ティトズ・アデガ(=ティトのブドウ園)の生産するワインのブランド名:A Cerca dos Fradesとはこの逸話に由来し、フランス語で言えばClos des Moines=修道士たちのブドウ園といった意味だろうか。
醸造所の設立者であるティト・シルヴァにとって、祖父が所有していたブドウ畑での家族総出での収穫の光景は大切な原風景であり、2015年からその畑の修復に着手した。テランテシュ・ド・ピコ、アリント・ドシュ・アソーレス、ヴェルデーリョのピコ島の地品種を選び、畑を再整備して3ha植樹。
2018年にはブドウ栽培が再開された畑は15haまでになり、ワイナリー設立から初のワインを醸造に至った。醸造はピコ島生まれの友人である、パウロ・マシャドをワインメーカーとして迎え、わずか650本の生産量からのスタートだった。
パウロもまたワインに魅入られたピコ島出身の醸造家で、ブドウ農家に生まれた。ブドウとワインへの興味は年を重ねるごとに深まり、アソーレス大学で学び、更にポルトの大学で醸造栽培学を修める。島に戻ってからも醸造や栽培を教える立場で活動し、20102016年の間アソーレス諸島ワイン委員会の会長として政策面でもアソーレス諸島のワイン文化の再興に努めた。その傍ら、自身の家族経営規模のワイナリーのプロジェクト(インスラ・ヴィヌス)を2006年から続けており、2014年にはフィリペ・ロチャ、アントニオ・マンサニータと共にアソーレス・ワイン・カンパニーの立ち上げに携わる。数年後アソーレス・ワイン・カンパニーの運営からは退き、ティトズ・アデガのワイン醸造長として働きながら自身のワインを造り、グラシオーザ島の協同組合でもその腕をふるう。
 
【畑と栽培について】
ピコ島のブドウ栽培:東西に長いピコ島の西側にブドウ畑は主に植えられており、強風や波のしぶきによって運ばれてくる塩分を防ぐ必要から形成された。それに加え、そもそも岩をどかさないとブドウを植えられるような表土が見えてこないのだ、というブドウ栽培家からの声もある。標高150mまではDOピコを名乗ることが出来、それ以上の標高のエリアでもIGアソーレスを名乗ることはできる。しかし「最高の畑はカニの鳴き音が聞こえるところなんだよ」と島の老人達は言い、実際ブドウの成熟度は海辺のワインの方が高いとされる。日中の太陽熱を吸収した黒い火山岩から造られた石垣の夜間の熱放出により果実の成熟が早く進むのだ。
  気候は典型的な海洋性気候で、穏やかな気温、小さい寒暖差、冬の大雨、および高い平均湿度で霧も頻繁に発生するので、風が強いとは言え、防カビ剤の使用は適切に行わなければならない。これらの非常に特殊な栽培状況のため植樹率も非常に少なく、ブドウの収穫量は1000kg/ha以下。
 
ティトズ・アデガでは、羊のブドウ畑内での放牧も行っている。伸びすぎた草を食べ、彼らの糞は表土の少ないピコ島の畑では貴重な肥料となる。
12月から2月にかけて、ブドウ畑が休息し、次の季節への準備をする間、羊が畑のメンテナンスを行ってくれ、ブドウ畑に調和をもたらす。
 
【セラーと醸造について】
溶岩が固いので、ピコ島には地下セラーは存在しないのだろう、と思われる。冷却機能の整ったステレンスタンクで醗酵の後、樽熟成。シンプルな醸造で、海辺の石垣(クライシュ)で栽培されたブドウの個性を最大限引き出す醸造を心がける。


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