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地域:Piemonte
地区: Monforte d’Alba モンフォルテ・ダルバ
造り手:Principiano Ferdinando プリンチピアーノ・フェルディナンド
―なぜ、ラシーヌはプリンチピアーノを扱うことにしたのでしょうか―
合田泰子/塚原正章
2013年6月
環境と自然、人間的な努力と叡智の産物であるワインは、詮ずるところ、自然の媒介役をする生産者次第です。
フェルディナンド(と、スペイン人の良き伴侶ベレーナ)・プリンチピアーノは、重い歴史に縁どられたピエモンテにおいて、現代における伝統のあり方を模索しながら、過去や教義に囚われることなく、自由な思考力と柔軟な頭脳に裏打ちされた積極的な行動力のもとに、典雅な「自然派ワイン」(ヴァン・ナチュレル、ヴィーノ・ナトゥラーレ)を生みだしてきました。
しかもフェルディナンドは、個性的なワインの生産者にありがちな、独善性やエキセントリックなところがありません。そのゆえに、ワインも彼の人格を体現して、〈まろやかで優雅で、かつ人懐っこい親しみやすさ〉を備えています。
過去も現在も多くの著名な生産者に飾られたピエモンテのなかで、大胆で独自な方向転換を迷わずおこない、すでにして頭角を現して名生産者に数えられているプリンチピアーノは、「現代のクラシック」というべき高みに達しているにもかかわらず、常に進化の過程にあります。この地域でこれほどの将来性に富む生産者は、ほとんど思いつきません。
しかも、あくまでも市場の受容性を考慮した価格は、品質からみると、とても良心的としか、言いようがありません。
このような多面的な意味で、まさしく比類を絶するプリンチピアーノこそ、ラシーヌにとって理想的な生産者であるだけでなく、ラシーヌの品質管理によって、その〈繊細優美な味わい〉を特徴とするワインの実力と個性がますます発揮される、と私たちは考えています。
“ランゲの人間であるということは、大地、ブドウ樹、そしてワインとのゆるぎない関係性を持つということである。それゆえに、1900年代初頭からすでに、私たちの祖先がブドウ樹と土地を取得してブドウ栽培を行うという着想に至ったのは、自然なことであった。
代々引き継がれてきた情熱と労働は私の両手にしみついているし、自然への最大限の敬意のもとに、受け継いだものを守り改善していくことができるということを願っている。
ブドウ樹を処置し、思いやり、共謀する。私たちの行いと生まれ持った素質から自然に生まれた産物であるバルベーラ、バローロ、ドルチェット、そしてネッビオーロのなかに私たちの大地の個性を再確立するためには私の家族全体を巻き込む必要があり、そのうえで情熱が不可欠だ。
私のピエモンテなまりと私の妻のスペインなまり。若者たちのマケドニアなまり。私の子たちの騒がしい声。収穫のたびにそれらが混ざりあい、情熱と希望とともに空に解放される。樹々に迎えられ、私たちを知ろうとするものにそれは与えられるのだ。”
生産者HPから一部抜粋 (翻訳作成:2013年6月)
“プリンチピアーノ家は、1900年代の初頭から、自分たちが所有する7ヘクタールの畑でブドウ栽培にいそしんできました。
自分たちのカンティーナは、50年代に父アメリーコ・プリンチピアーノの手によって実現され、1993年から、息子である現当主、フェルディナンドが引き継いでいます。フェルディナンドはアメリーコから、畑でも、醸造面でも貴重な経験を得てきました。カヴィオラの指導のもと1993年から10年間、ロータリーファーメンターを使って、近代的なワインを造っていましたが、伝統的なつくりのワインが持つ味わいの偉大さが理解できるようになるにつれ、2002年にまったく方向を変えることを決断しました。2004年にロータリーファーメンターを売って大樽を購入し、その哲学と概念をあらためて定義しなおしています。醸造は、とりまく自然と地域環境の特徴を子細に反映させるためのものであると考え、そのために化学肥料や除草剤、殺虫剤、防カビ剤の使用を放棄するのを信条としました。2012年からは、最も重要な3haの畑ではボルドー液も硫黄も使用しないで栽培しています。
高品質のワインを生み出すために、ブドウ畑が円熟していることが根本的な役割を果たします。プリンチピアーノ家が所有しているクリュのブドウの樹齢が40年から60年におよぶことを、誇りに思ってもいいのではないでしょうか。
ブドウ樹1本あたりの収量を750gから最大でも1.5kgに抑えるため、間引きを進めてきましたし、醸造もクラシックなスタイルになりました。サステイナブルで自然環境との調和をとるスタイルを実現するために、野生酵母で発酵することを好み、発酵時には温度管理も硫黄の添加も行いません。ルモンタージュはポンプを行わずに、手作業で行うことにしました。SO2を使用するのはビン詰め時のみで、清澄も濾過も行いません。
「幼いころ、家用に祖父が造っていたワインはタニックでなかった。私は、体に吸収されやすい、エキストラクトを強くしない、アルコール度数の低いかつてのスタイルを造りたい。美味しくて自然な味わいが信条だ。」「ワインはテイスティングするものでない。畑の中でバランスがとれていることが重要。今自分の信じる好きな方法で醸造でき、大変喜んでいる。昔はジャーナリストのために造っていたようなものだ。歴史を知れば知るほど、この地方の強い個性を理解できるようになった。」とは、フェルディナンドの言葉です。目指すスタイルは、骨格
があり、優雅で、バランスよく、スムーズな口当たりで、飲み心地の良いワインです。”
生産者HPから一部抜粋、合田によるインタビューで補足 (翻訳作成:2013年6月)
ラシーヌは、プリンチピアーノの取り扱いを始めた理由は、「プリンチピアーノが造っているワインが、特別美味しいからだ」と、だけいって済ませられるような、単純な問題ではありません。ラシーヌが、プリンチピアーノをどのように位置づけているか、ということを、ぜひともご理解いただきたいのです。つまり、プリンチピアーノの取り扱いを決定することは、これまでいくつもの著名なピエモンテの生産者をご紹介してきた小社にとっては、大きな決断であるだけでなく、数あるピエモンテのワイナリーのなかで、プリンチピアーノがいかに重要な生産者であるのかという事実と、ラシーヌのプリンチピアーノに対する評価を鮮明にしておく必要があります。
そのためには、ピエモンテにおける生産者市場の歴史的な流れや動きから説明しましょう。ピエモンテのワイン界の流れのなかで現状を評価しなおし、プリンチピアーノを位置づけることが必要なのです。
ところで合田と塚原は、マルク・デ・グラツィア(愛称マルコ)およびバローロ・ボーイズ多数とも仕事で深くかかわってきただけでなく、ピエモンテの伝統派を形作ってきた巨匠や達人たちとも、仕事を超えたつながりがありました。そこで、やや個人的な視点を交えながら、マルコとバローロ・ボーイズたちの歴史的な役割をふまえつつ、伝統派との類比のなかで、ピエモンテワイン界の潮流をかいつまんで概観したいと思います。
そこで、プリンチピアーノの位置づけです。(一頁を参照ください)
ワインは単に畑と醸造所の産物ではなく、造り手の人格と識見を現すという点が、肝心です。これまでの情報を整理して、要点をのべます。
(塚原・記)
畑面積:13ha
栽培品種:ネッビオーロ、ドルチェット、バルベーラ、フレーザ
創業年: 1960年
年間平均生産量:80000本
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