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チンクエ テッレの偉大なる造り手は名前を捨て、さらなる表現を追求し続ける。
リグーリア東部、ラ スペツィア近郊。チンクエ テッレと呼ばれる西端のモンテロッソからリオマッジョーレまで、地中海に面した5つの町。近年世界遺産に登録されたことでも注目されましたが、ワイン造りの歴史は古く、1100年代にはブドウ栽培・ワイン醸造の記述も残る、歴史ある土地。平地がなく、土地も痩せているチンクエ テッレ。人々は急斜面の固い岩盤を砕いて石垣を築き、岩盤を砕いた際に出た砂を土壌としてブドウ畑を作った、という非常に過酷な環境。それでも、潮風とミネラル豊富な土壌から生まれるブドウ、ワインは中世の時代より価値を見出され、希少なワインとして評価されてきました。
あまりにも急な斜面、トラクターなどが入る余地はなく、栽培から収穫まですべてが手作業。収穫したブドウを運ぶのさえ、担いで階段を上らなければいけないという厳しさ、、。栽培面積の少なさ、過酷な環境、多大な労力を必要とするチンクエ テッレのワインは、それだけで希少かつ特別な存在といってもいいでしょう。
ただでさえ貴重なワインであるチンクエ テッレ。しかしこの貴重さに奢ることなく、徹底したこだわりを持つ造り手である、ヴァルテル デ バッテ。栽培の過酷さははもちろん、多くの収穫を見込めない畑。ワインを造るだけでも貴重といわれる環境の中、薬品類や肥料に頼るのではなく、自然環境を尊重し、土地、ブドウ樹の自然バランスを尊重したブドウ栽培を行っている。さらに言えば、ただでさえ希少なブドウであるにもかかわらず、そこからさらに収穫量を抑え、果実の凝縮、完熟したブドウから表現されるチンクエテッレの個性。1haあたり12000本という超高密植、海からの強い風に耐えるため、そして結実を減らすための非常に低い仕立て。僅か0.7haの畑から収穫、ワインとして出来上がるのはたった1500L~2000L、あまりにも少なさには絶句してしまいます、、。
いかに過酷な環境であろうと、一切妥協のない栽培・醸造哲学により生み出される彼のチンクエ テッレは、90年代末には周囲の生産者を圧倒しており、唯一無二のチンクエ テッレとして評価されていた。それにも関わらず、2007年を最後にDOCから離脱する道を選びます。リオマッジョーレで生まれ育ったヴァルテル。土地、そして歴史を深く愛し、醸造についても近代的な手法よりも、土地に残る伝統的な醸造方法にこだわってきました。「チンクエ テッレの骨組みともいえるブドウ、ボスコ。分厚い果皮を生かすためにも果皮と共に醗酵させる。完熟したボスコは果皮が赤くなってゆく、だからワインの色が濃くなることは当然なこと。無色透明なワインでなければチンクエ テッレとは呼べないなどと、近年のDOCが言い始めた時、自分からDOCを辞めようと思ったんだ。自分が造りたい、表現したいのは土地≪テロワール≫としてのチンクエ テッレ、名前や肩書に左右されるものじゃない」。
当時、チンクエ テッレをけん引するほどの偉大な造り手であったヴァルテル。これまでの栄誉や肩書きをすべて捨て、リオマッジョーレにある自分の畑0.7haと別に、これから先の可能性を追求するべく、「Primaterra」として新たに畑、カンティーナを立ち上げました。
Primaterraプリマテッラでは、これまで自分で見てきたチンクエ テッレという土地の個性、「それはもっと広い視野で見た歴史・気候環境をも感じ取れるものなのではないか?それこそ、地中海沿岸に沿って隣接するニース(1800年代までイタリア領であったこともあり、リグーリアには大きなつながりがあると考えているヴァルテル)を中心にプロヴァンス、そして地中海を越えた先にあるサルデーニャ(グルナッシュというブドウを追ってゆくと、リグーリアのグラナッチャ、スペインのガルナッチャ、トスカーナのアリカンテ、最後はサルデーニャのカンノナウにたどり着くという、、)をも含めた「mediterraneo=地中海」という個性を表現できるのではないか?彼の目には「国境や州を越えても、全く異なる土地と見るのではなく、様々な違いはあれど、ある種の一体感や通じ合う部分を持つ、それこそが地中海を中心にした文化的な個性なのではないか?今まではDOCという枠でしかワインを見ることができなかった、だけどそこから離れることで、より広い視野でワインと向き合うことができる、そう話す彼。一つのワインから、土地を表現する。それだけではなくもっと幅広い世界観を表現しようというヴァルテル デ バッテ。これまで以上の独自性を感じつつも、それを十分に感じさせる味わいを秘めた、凄まじいポテンシャルを秘めたワインです。
リオマッジョーレにある代々受け継いできた0.7haの畑、そしてプリマテッラとして持つ2ha、マナローラ近郊と、トスカーナとの州境近く、2001年に植樹。ブドウはチンクエ テッレを構成するブドウ、ボスコ、アルバローラ、ヴェルメンティーノ、ロッセーゼビアンコを中心に栽培してきた。
家族で代々引き継いできたブドウ畑は樹齢が80年を超えるものも少なくない。2001年より新たな試みとして、ロッサーノ ディ ニッツァ(ルーサンヌ)、マルサン(マルサンヌ)、そして地中海を中心に広く栽培されるグラナッチャ(グルナッシュ)、シラーなど栽培。岩盤におおわれているチンクエ テッレは土壌が少ないため雑草の成長が非常に弱いこと、そして弱い地盤を守るためにも、表土は基本的に傷付けず、雑草さえも必要でなければ刈り取らない。畑に対しては基本的に最低限の介入のみ行う(銅や硫黄についても必要とならなければ使わない)という栽培哲学を持っている。海からの強い潮風に耐えるため、仕立ては背の低いアルベレッロ。1haあたり12000本という超高密植にて栽培しています。ヴァルテル曰く、「ブドウ樹にとって一番大切なものはバランス感。非常に厳しい環境の中、樹それぞれが自主的に結実を落とすことで、凝縮しつつもバランスを保った果実を収穫することができる。」収穫量は1haあたり20q~という驚異的な少なさ、、。
チンクエ テッレを構成するブドウの中でも、とても重要な存在ともいえるボスコ。樹の成長が緩やかで、果皮が非常に厚くワインの骨組みを構成するブドウ。対照的にヴェルメンティーノ、アルバローラは果皮が薄く大粒、高い糖分と強いアロマを持ったブドウ。そしてロッセーゼ ビアンコは非常に繊細で栽培・収穫が非常に難しい。奥行きを持ったボスコに、それぞれのブドウがアロマや香りを補う、、。そしてサヴォイア時代の名残ともいうべきロッサーノ ディ ニッツァ(ルーサンヌ)、マルサン(マルサンヌ)。過酷なチンクエ テッレの環境に適応する個性を持ったブドウ。そして、地中海沿岸に広く栽培されているグラナッチャ(グルナッシュ)やシラー。全く無関係のようで、地域的な背景や歴史を紐解き、土地に適応すると実証する。徹頭徹尾こだわり抜かれた栽培理論を持っている。
白ブドウはブドウ品種によって収穫時期が大きく変わります。共通して言えるのは樹上にて十分成熟するのを待ってから収穫。果皮の弱いヴェルメンティーノやアルバローラは9月末~10月初。ボスコは10月末まで分厚い果皮が完熟するのを待ちます。果皮と共に約1週間弱、野生酵母による醗酵を促します。圧搾したタイミングでアッサンブラージュ。その後、オリと共に24か月シュール=リーの状態で熟成。醗酵が終わりきる前に合わせることで、ワインとしてより一体感を得ることができる。そして醗酵の過程でオリに移った要素をすべてワインに戻すためのシュール=リー。オリに問題が起きなければ、アッサンブラージュからボトル詰めまで、一度もオリ引きを行わないといいます。ブドウ自体のポテンシャルの高さはもちろんですが、これほど長いシュール=リーに耐えるだけのバランス感。「早い段階でアッサンブラージュすることで、醗酵の最期を一緒に終えることができる。それはワインに一体感を生みだす。そして、長い期間オリと触れることでオリ由来の味わいや複雑味、香りをワインの戻すことができる。強靭な酒質と複雑さを感じつつも柔らかい、バランスを持ったワイン」。考え抜かれたブドウ樹と土地の相性、そして突き詰められた醸造へのアプローチによって生まれたワイン、Altoroveアルトローヴェ。強靭な酒質と深い奥行き、時間と共により繊細に、複雑な味わい。チンクエ テッレからスタートする「地中海を巡る旅」とでも言わんばかりの、様々な表情を持ったワイン。リグーリア特産でもあるアンチョビの塩漬と合わせられるほど濃密な旨みと酸、柔らかみ、本当に驚かされてしまいました。
黒ブドウにおいては、果皮の持つ要素を最大限引き出すことが重要と考えている彼。樹上で限界まで完熟を待ったブドウ、果皮と共に60日間のマセレーションを行う。サンジョヴェーゼを主としたワインTonosトノス。特有の強いミネラル分、そして潮風を受ける特別な環境に植えられたサンジョヴェーゼは、他の土地にはないオリジナリティを持ったワインへと変貌する。
そして、最も可能性を感じているグラナッチャとシラーより造られるワインÇericoセリコ。海に切り立った標高500mの土地に2001年に植樹。グラナッチャにとって必要不可欠な海からの風と、昼夜の気温差をもった特異な環境にて栽培。ゆっくりと成熟する果実を収穫するのは早くても10月中旬以降、長い時間をかけて熟成した果実のみを収穫。そして成熟した果皮を存分に表現するため、果皮と共に60日~70日に及ぶ醗酵、そして木樽にて約36か月の熟成。一つのワインを造るために、これほどこだわった栽培哲学、醸造からリリースまでに費やす時間、すべてにおいてケタ外れのワイン。非常に個性的な香り、果実の密度は白に負けずに高く濃密でありながら、柔らかみ、バランス感を決して失っていない。繊細さ、奥行きの深さを感じるワイン。
過酷な環境、限られた土地。チンクエテッレという名前だけで希少かつ高価といわれる現実に逆らい、VdTとして徹底した栽培・醸造、ブドウへのこだわりによって生み出されるヴァルテル デ バッテのワインは、味わいを含めそれ以上の価値を持った素晴らしいワインです。リリースされるワインの少なさは常軌を逸しているレベル、、。リグーリアを代表する「唯一無二の造り手」といっても過言ではないでしょう。
クレジットカード、amazon pay、代引き、銀行振り込みがご利用できます。
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