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地域:Loire ロワール
地区、村:Anjou アンジュー
造り手:Martial Angeli マルシャル・アンジェリ
HP:なし
【ワイナリーと造り手について】
ワインとは無縁な仕事につきながら、80年代に甘口ワイン造りの魅力にとりつかれ、マルク・アンジェリが創業したワイナリー。ボルドーで醸造学を学んだあと、フランス各地で醸造を経験したが「ボルドーではラ・トゥール・ブランシュとスデュイローでスタジエをしたが、ボルドーの人工的なワイン造りではなにひとつ学ぶことはなかった」という。1990年にアンジュー地区コトー・デュ・レイヨンとボヌゾーに7haの畑を購入。現在は10haになった畑すべてで、創業した1989年より敢行しているバイオダイナミックを実践、そのワインはヴァン・ナチュールの精髄といえるだろう。マルクは、ニコラ・ジョリーとギィ・ボサールとともにラ・ルネッサンス・デ・アペラシオンを盛り立て、ヨーロッパの造り手たちに真剣に有機栽培を取り組む運動をおこし、なかでもマルクは、活動の方針を考え、積極的な役割を担ってきた。「ボヌゾー」では最高の評価を受けているが、他の白ワインはもちろん、ロゼも素晴らしい。
2002年にカベルネ・ソーヴィニョンとガメの栽培をやめ、シュナン・ブランに植えかえるなど、早い時期からアンジュー地域のシュナン・ブランを世に広めるべく注力してきた。その後もグロロー・ブラン/グリ/ノワールなどの地品種の植樹を行い世に出している。地域への若手の栽培家たちの移住、栽培、醸造の指導や支援も積極的に行ってきた。2022年を最後に公式には引退し、現在は息子のマルシャルが当主となりワイン造りを継続。
◆栽培品種の変化202404
ロゼ・ダンジュールの生産は2023VTが最後となった。2024年からシュナン・ブラン畑1.5haを管理することとなり、ロゼ・ダンジュール用に栽培をしていたグロロー・ノワールの畑を手放すことに決めた。これからはシュナンとグロロー・ブラン、グロロー・グリの白ワインの生産に注力していく。
2019年からは自根:ヴィーニュ・フランセーズの生産を再開。今の所毎年100Lも収穫できていないので、毎年醸造が終わった段階で複数年ブレンドして熟成させている。いずれフィロキセラにより枯れてしまうのはわかっている事ではあるが、フィロキセラ禍とアメリカ台木を通して栽培・醸造の近代化が何をワインにもたらしたかを理解するために、一人の農家として自根のブドウからできたワインを生産することに意義があると考えている。
【栽培と醸造】
栽培:バイオダイナミック/エコセール、デメテール取得。(創業当時からバイオダイナミック)
デメテールを取得するにはバイオダイナミック法に従わなければなりません。ワインは勿論の他、リンゴジュース(リンゴの栽培)、小麦粉、蜂蜜、オイルなどもデメテールを取得しています。
栽培品種:シュナン・ブラン、グロロー・グリ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、グロロー・ノワール
自社畑面積:7ha
契約畑面積:0.3ha
ブドウ以外の自社農作物:りんごジュース
ブドウ畑以外の自社畑総面積:6ha
主な仕立て方法:ゴブレ式
土壌:片岩上に粘土・砂質、柔らかい沈積物、粒状の片岩と石灰分を含む岩石
栽培、醸造:大小4つの垂直型木製のプレスを使い分けている。
10haの畑すべてでバイオダイナミックを実践。225リットル樽で熟成、いずれも補糖しない。
酵母のタイプ:野生酵母
年間生産ボトル本数:17000本
マルク・アンジェリ、2015年8月19日 来日時インタビューより
<醸造について>
赤ワインの造りの話をさせて頂きます。みなさんよくご存知だと思いますが、赤ワインを造るブドウを収穫した時にその粒を手に取って、潰すと、中から出てくる液体は透明です。ワインを赤く仕上げていくにあたり、皮の色を取る必要があるのでマセレーションを行います。やり方は様々あります。主に2つあるとすれば、一般的なのが一緒に醸しを行うこと。すると皮の方が軽いので浮上します。それを果帽とよびます。表面が完全に浮くので、そこをそのままにしておくと、ヴィネガーに変わるリスクが生じます。それを回避ための手段は現在までは2種類しかなく、
しかし、近所でワインを造っている友人が、三つ目の方法があると教えてくれました。タンクの形をした円錐状のシートみたいなものを落し蓋のように上に乗せ、そのシートに大体20cm分くらいの水を入れます。水の重みで果帽は果汁に浸り、水の重みと圧力でシートは横に広がるので、空気が入るのを防いでくれます。
醗酵時に発生する二酸化炭素は、シートを押しのけタンクの内壁とシートの間を抜けて外に出ますが、空気は入ってこない仕組みです。常に果帽が浸かっている状態になっていれば、ルモンタージュやピジャージュをおこなう必要もなく、抽出がより多くできるという利点もあります。同時に抽出されるタンニンが非常に繊細な、デリケートなタンニンの抽出が可能となります。
この手法を用いた結果、ピジャージュをして得られるタンニンと、そのままにした時のタンニンには大きな違いがあり、そのままにしておいた時のタンニンは非常にきめ細やかなタンニンの抽出が可能となりました。反対にピジャージュを行った時、要は果帽を動かした時に得られるタンニンは、少し素朴で、野性味のある、少し荒々しいタイプのタンニン抽出となりました。細やかなタンニンゆえに、ビン詰めしてからすぐに楽しめ、さらには長期間熟成が見込めます。タンニンが豊富に含まれているけれどもそれを感じない繊細さがこの醸造の興味深いところです。
発酵後、一般的にはタンクの底から液体を出し、果帽をタンクから取り除きプレス機に入れて圧搾するのが一般的です。しかし、今回のようにシートで醸した場合は、通常通り下から液体を取り除きます。果帽はシートと共にタンクの底に沈みます。液体がなくなった後はシートの中の水を20cmあったところを1m分追加します。その重みで自然と果帽に圧がかかり液体を抽出します。この工程でも果帽を触らずおこなえ、繊細なタンニンをプレス・ジュースからも抽出可能になります。
ちなみにこの手法はバイオダイナミック農法でワインを造る人間(=バイオダイナミックスト)が思いついた手法です。バイオダイナミックストが考え付いた方法である以上、特許申請もおこなわれておらず、誰でもその方法を用いて赤ワインが造れます。
我々が意図しているところは、みんなで意見を出し合って、みんなで向上していく。決してひとりよがりな、自分だけのものにするようなエゴイストな発想は私達は持っていません。
この方法を地元の人が考え付いてくれたのは幸運なことで、アメリカ人が考え付かなくて良かったと思っています。
<畑での収穫風景> 収穫と除梗について
グロローは特別除梗する必要はありませんが、カベルネは必ずと言っていいほど除梗した方が良いセパージュです。そうしないと青み、えぐみのあるタンニンが出てしまいます。「素朴」で「荒い」味わいになってしまいます。それをなくす方法が二つあります。
1.一つが99.99%の割合で使用されているものとなります。除梗機に房を入れて、実と茎を分ける方法。
この機械は高額で電気代もかかり、さらに取扱いに注意しなくてはいけない危険な機械です。
もう一つが、受け皿のような形状の篭を竹などの素材を編み込んで作ったものを使用することです。私が持っているカベルネの畑は苗と苗の間隔が非常に狭いので、機械を通すことが出来ません。よって、馬で入って収穫を行います。馬で荷台を引っ張りますが、その荷台にプラスティック容器を3つほど置き、その容器の上に籠を配置します。
収穫してきた人間がそこにブドウを房ごと入れ、馬を引いているスタッフがそれを洗うように手で摩り実だけ落として、房は畑に戻してそれを肥料がわりに使います。
このやり方は、危険を伴わず、電気も使用せず、騒音もなく、さらには馬に乗っているスタッフの良い暇つぶしにもなり、そして畑の肥料まで作れてしまいます。
ドメーヌ・ド・ラ・サンソニエール
――Mark Angeli マルク・アンジェリとAnge(天使)の味わい――
Hommage a Mark Angeli マルク・アンジェリを賛えて 合田 泰子 2007年
マルク・アンジェリが手がける絶品のシュナン・ブランは、すっかりおなじみになりました。軽やかさ、官能的でかつ上品な味わいは、ひと口味わった瞬間に、飲み手を深い感動へと導いてくれます。目を閉じて余韻を味わう一瞬の、なんと幸せなこと。端正な美しさに秘められた力強さは、後述するようにマルクの人となりを映し出しているのです。
マルクは、いまやトレードマークとなったハンチングをかぶり、日暮れまで畑に出て自らを“paysan polisson ”「おちゃめな農夫」とでも訳せばいいでしょうか、とふざけ半分に自称しています。ご存知のようにINAO (l’Institut National des Appellations d’Origine 国立原産地呼称機関)と論争を繰り返し、「AOCが求める生産地の特徴など、あまりにもいい加減で、ナンセンスこの上ない」とINAOをl’Institut Negativiste de l’Apathie Organoleptique(生理学的に感覚が鈍くて無為無策な、消極的機関)と決めつけ、誇りをもってヴァン・ド・ターブルを名乗っています。
原子力発電所建設に反対し、核開発や戦争に怒り、純粋に平和のために祈り、つねに古の叡智に耳と心を傾け、精神をとぎすまし、マンネリと不断に戦い、思索しつつワインを造っているような人物です。純粋なひたむきさと強い意志、高い志と繊細な感覚が、醸造を始めて10余年という経験から練りあげられた技と一体になって、丹精した畑の力を引き出すことに成功し、味わいに現れているのではないでしょうか。
数年来、彼のシュナン・ブランをこよなく愛し、ひたすら楽しんできたわたしですが、2001年を境にその作風が大きく変ったように実感しています。一般的にいって、エキスが閉じ込められた辛口のシュナン・ブランは、えてしてアーモンドの核めいた苦さが残りがちで、タニックなニュアンスが感じられることが多いのですが、2001年以降の彼の作には、まるで宙を舞う天使を思わせるような、無上の軽やかさがあります。
まさしく彼のワインは、しみじみと苦しみを超えた人生の喜びをかみしめることができる、大人の飲みものではないでしょうか。いまや人知の域を越えて「芸術品」ともいうべき境地に達した趣のある極上のアンジューを味わって、幸せなひと時に浸っていただきたいと思います。
ロゼ・ダンジュール新世代 2006年5月
「ロゼ・ダンジュール新世代」については、4月の『ラシーヌ便り』でお知らせいたしましたが、少しだけ補足いたします。2005年にマルク・アンジェリは、「ロゼ・ダンジュール」を商標に登録しましたが、マルクは商標を独り占めすることを欲しませんでした。そこで、ワイン哲学を共有する若き仲間たちに呼びかけて、マルク型の「ロゼ・モワルー」方式による独自の醸造方法を伝えた結果、11人の造り手が各自「ロゼ・ダンジュール」を造りました。
ラシーヌには私の選んだ次の4人のロゼが到着いたしました。ディディエ・シャッファルドン、エルベル・ロラン、ダヴィッド・フランソワ/シャトー・パッサヴァン、ブルーノ・セルジャンで、いずれも才能豊かなアンジュー地区の新世代です。
1)ディディエ・シャッファルドン
マルク・アンジェリがワイン造りを始める前からの、マルクの旧友。ワイン造りを志したときに、マルクの助言を得て、この地区にやってきた。几帳面で誠実な人柄で、マルクの信頼が大変厚い。4人のなかで、唯一カベルネ・フランとピノ・ドーニを混醸しているため、柔らかなニュアンスと同時に、骨格と奥行を備えています。
2)ダヴィット・フランソワ/シャトー・パッサヴァン
12月の審査会の際、もっともチャーミングな味わいで、心を惹かれたワイン。カベルネ・フランとグロロー・グリの混醸。きれいな酸と果実味のバランスが美しく、残糖は控えめ。アンジェ城の原型といわれる要塞型のシャトー・パッサヴァンは、AOCアンジューのほぼ中央に位置している。ここではカベルネ・ダンジュ、アンジュー・ルージュなど10種類のキュヴェを造り、エコセールの認証を得ている。2005年にロゼ・ダンジュールを造ったことを機に、他のキュヴェもいっそうヴァン・ナチュールのスタイルに変わっていくことを、私個人としては期待しています。
パッサヴァンのカベルネ・ダンジュは、大量生産のロゼとは一線を隔す一クラス上の低価格帯のロゼです。
3)ロラン・エルベル
ナデージュとローランの若いカップルが造る。2005年がファースト・ヴィンテージで、継いだ畑の回復のため、収量を極端に抑えた。カベルネ・フラン100%の本作は、4人のなかで最もエキスが深く、わずかにタニックなスタイルを有する。
4)ブルーノ・セルジャン
ダヴィット・フランソワと同じく、12月の審査会で、ロゼ・モワルーらしい柔らかさとチャーミングなキャラクターを強く感じた一人。グロロー・グリ100%で、色は淡いサーモン・ピンク。貴腐ブドウのニュアンスが最もよくでています。
12月の審査会を振り返ってみますと、ほとんどの造り手のワインが発酵途中のため、どのような仕上がりになるか、あの次点での判断は困難でした。が、各ワインとも、ほぼ想像したスタイルに仕上がったと思います。審査会の時に私が選んだ基準は、〈やわらかなテクスチュア〉〈酸の美しさ〉〈アフターの残糖が心地よいこと〉の3点です。ビン詰をしたばかりの、マルク・アンジェリは、11人のなかでもっともかたく、色も例年に比べかなり深い色調のため、マルクのワインとはブラインドではわかりませんでした。マルクによれば、2006年ヴィンテージの審査会は今回の12月よりも遅らせて2007年1月、サロンの直前に行って、いっそう仕上がりの進んだワインをテイスティングする予定です。
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