ご利用ガイド
クレジットカード、amazon pay、代引き、銀行振り込みがご利用できます。
配送は常時ヤマトクール便でお送りいたします。営業日当日13時までにご注文のワイン、入金確認お場合原則当日出荷いたします。
15,000円以上送料無料(九州、沖縄は除く)基本送料は990円、その他の地域はショッピングガイドをご覧ください。
「私も50歳、最後にいい仕事をしたいからね」
というニコラの言葉に歓喜していたのに、まさかのぬか喜びだったのか、と歎きながら時間が過ぎて行きました。
ところが2015年も押し詰まった12月2日になって突然、「12月7日、集荷に来てください。ラベルと印刷代用のお金が足りない」と、いきなり入金催促メールです。
ニコラもワインも無事というわけで、一同、安堵の胸をなでおろしました。
さて、2016年2月にはサン・ペルレ、シュナン・ブラン、ソーヴィニョン、が一挙に届きます。ニコラの復活を祝してロワール地方のお料理と、細身で繊細なシュナン・ブランを楽しむ会を開かなくては、と大きく期待がふくらみます。
合田泰子
合田 玲英のフィールド・ノートより、2016年3月寄稿
ラシーヌの研修員の方とともに、重要生産者を訪問した。なかでもニコラ・ルナールは異彩を放っていた。長いあいだ話に聞くだけだったけれど、初めて飲み味わった彼のワインはとても綺麗なつくりで、なんとなくイメージしていたワインと違っていた。感覚とセンスで造り上げる人かと思っていたら、話を聞くにつけ、とても論理的で細かいところまで考え抜いている。多くの生産者と話し、彼らのワインを飲みながら、独学でワイン造りを学んできたそうだ。ニコラはあまり他のワインを褒めることはないけれど、話しているとひたすらワイン造りが好きなことが伝わって来る。趣味は家具造りだそうで、ものを造ること自体が好きなのだ。
冬の剪定も春先の芽かきも3haの畑を全て独りで行っていて、多くの時間を畑の中で費やしている。セラーの中の仕事は洗うくらいしかないと言い、セラーでの作業が多いのはブドウが悪いからだ、とまで言ってのけた。ワイン用ピペットも試飲中に何度も取り替えたり、洗ったりしていた。現在醸造しているところは不動産サイトで見つけたそうで、ロワール河沿いには写真のようなセラーが簡単に見つかるそうだ。40年前までネゴシアンのセラーとして使われていただけあって、醸造環境としては理想的に思える。
畑でのボルドー液使用は、ビオの栽培でも認められている。けれどもニコラは、土壌の汚染を避けるために量を控え、極力草花の煎じ薬や春先にハーブの種をまくことで対応している。畑は2012年から借りているもので、ニコラが借りるまでに決して良い手入れをされてきた訳ではないから剪定の仕直しや環境を整えるにはかなり時間がかかる。しかし一度剪定を綺麗にし樹液の流れを正し、果樹を植えるなどして畑の周りの環境を整えればそれだけ手間をかけずに健全なブドウを手に入れられることにもつながる。写真の畑はまだまだ良い状態とは言えず、たくさんの改良の余地がある。
しかし、借りているこの畑のオーナーは、パリサージュを外すというニコラの新しい畑の仕立て方には、異論があるとか。すでにこの畑には3年も時間をかけてきているだけに、困ったことである。
パリサージュを外すことは、電磁波の影響を防ぐためであり、電磁波の強く発生する環境では病気やカビが蔓延しやすいとのこと。ニコラは畑のなかでも、その重要性について、力を入れて話してくれた。いずれにしても、自社畑は自力でまかなえる現在の3ha以上持つつもりはないよし。畑の問題は、だれにでも、いつもつきまとう問題なのだ。それにしても、完全に自分が思い通りに栽培できることが、とりわけニコラには必要なのだ。
セラー内でニコラは、金属製品を排除している。セラー内の電灯には、電圧の低いものを使う。ワインの移動には絶対に電動ポンプの動力をもちいず、手動のポンプによるか、または樽自体をフォークリフトで持ち上げて生じる位置のエネルギー(重力)を使って、スティラージュなどの作業を行う。バリックの他にワイン用のタンクとしては、グラスファイバーのものがあるだけだ。
ニコラにとっては、ワイン造りの過程において亜硫酸添加はありえない。だけれど、それを実行することは簡単なことではない、とつくづく思う。上記のことに加え、一番気を使うのは、外部の人を雇わなくてはいけない収穫の時。収穫人に求められるのは、健全なブドウを迅速に収穫すること。だけれど、選別基準を醸造家本人とどれだけ近づけられるかが問題だ。そこでニコラは収穫を始める前に、明らかに状態の悪いブドウと良いブドウを摘んできて味見させ、さらに果汁を絞って味見してもらうことから始める。品質の違いを体で感じてもらうことで、選別の精度を上げるためだ。さらに収穫は最大でも5人で行い、小さな収穫箱は使わない。小さな収穫箱は熟練の収穫人が作業するには良い。が、そうでない場合は、摘んだそばからトラクターに積まれてしまい、ブドウの品質確認ができない。だからニコラは、少し大きな収穫箱を用意する。収穫人は小さなバケツをそれぞれ持ち、バケツがいっぱいになったらそれをニコラに渡して、ニコラ自身がブドウの最終確認をしてから収穫箱に入れる。こういう手法を取っているため、ニコラ以外の収穫人は多くても4人が限界なのだ。ブルゴーニュように経験を積んだ収穫人が来てくれるような場所ならば、小さな収穫箱でも問題ないが、場所と状況が違うので、考えて対応しなくてはいけない。
聞けば聞くほど、ニコラにはワイン造りのどの工程においても独自の考えと方法がある。たくさん仕事があって大変だよとこぼすので、どうしてそこまでと聞くけば、「ワイン造りが好きだからなあ」とニカッと笑う表情が素敵だ。
◆シャトー・ド・ゴールでのワイン造りについて
ニコラ・ルナールから「リムーで僕がコンサルタントをするワインがあるのだけれど、興味ある?」と、またしても突然話が降ってきたのが2021年の夏。シャトー・ド・ゴールという生産者のコンサルタントをすることになり、2021年VTの醸造からリムーでのワイン造りを手伝うことになったという。シャトー・ド・ゴールは50ha以上の畑をワイナリーなので、オーナーのピエール・ファーブルと話し合いながら、少量ずつニコラの考えるワイン造りをしていくことになるだろう、という話だった。
大きく不安に思いながらも、ニコラの手掛けるグルナッシュ、シラー、シュナン、シャルドネ、ペット・ナットなどなど、期待せずにはいられないフレコミで、ラシーヌからNOという返事をすることはありえなかった。ピエールもラシーヌにニコラの関わったワインの紹介については積極的で、まだ出来上がっていないワインの購入が決まった。
2022年春に試飲した、熟成中のワインは、生産地が違ったとしても、ニコラ作のワインだと納得のいくものだった。しかしその頃からお互いに意思疎通が難しくなってきている、とニコラとピエールのやり取りをラシーヌが介することが多くなった。片や50haの畑を所有するワイナリーのオーナーと、片や年産10000本に満たないワインを洞窟で生産する風来坊。わかり切っていたことなのかもしれないが、2022年の夏に二人の共同プロジェクトは解消してしまう。
「ワインにおいてブドウ栽培が何よりも大事で、醸造で出来ることは何もない」とワインの造り手はしばしば口にする。とはいえ誰がどのように、どこまでワイン醸造に関わってきたかも同様に重要な要素であることには疑いが無い。
共同プロジェクト解消の2022年夏時点で、ラシーヌが購入を約束していたワインは全てシャトー・ド・ゴールにて熟成中で、それらのワインの原料となるブドウの栽培にニコラは関わっていない。ラシーヌとしてはワインの醸造から瓶詰までだけでも、ニコラに完結してもらわなければならない。ピエールとニコラを根気よく説得し、2022年11月にニコラの監督の元、赤ワイン(グルナッシュ1種とシラー2種)の瓶詰めをしてもらうことが出来た。白ワインとペット・ナットについては、ニコラの手による瓶詰をすることが不可能だったため、購入を断念。
プロジェクトの立ち消えは残念でならないが、もしまた同じような話があったら何度でも乗ってしまいたくなるような夢のあるプロジェクトだった。赤ワインすら到着しなかったらと思うと気が気でなかったが、ワインは無事入港し日本市場に紹介できる運びとなった。
上記のような理由から100%ニコラのワインとは言えないかもしれないが、収穫から瓶詰までニコラの監督の元で行われた。「収穫のタイミングは出来上がるワインの方向性を決定づける重要な事項だ。ロワールと醸造所のあるリムーを行き来するのは大変だったけれど、瓶詰まで責任をもって行うことが出来たし、素敵な人たちに出会うことが出来た。最終的にはド・ゴール側とのやり取りが難しくなってしまったが、最後まで僕を信じて指示通りにワインの管理を行ってくれたマチューと、ド・ゴール敷地内で民宿を営むブノワとテレーズには感謝してもしきれない。」とニコラ。
※キュヴェ名はどれもアルデリカ(シャトー・ド・ゴールの地域に伝わる伝説に登場する王女の名に由来)で、それぞれ品種名が記載されている。シラーの2種の畑名は裏ラベルに記載。
クレジットカード、amazon pay、代引き、銀行振り込みがご利用できます。
配送は常時ヤマトクール便でお送りいたします。営業日当日13時までにご注文のワイン、入金確認お場合原則当日出荷いたします。
15,000円以上送料無料(九州、沖縄は除く)基本送料は990円、その他の地域はショッピングガイドをご覧ください。